NaeBuka
ぼくらの秘密基地
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EpisodeXX デンジャラス・シップ

 太陽の光を浴びて青くきらめく地球。その軌道に一隻の漂流船が接近していた。漂流船はSOS信号を発信し続けたまま呼びかけに応えず中の状況がどうなっているのか、乗組員は無事なのか、何一つ情報を得られないままであった。漂流船が地球を通り過ぎる前に乗組員の創作と救助を行うべく、地球署署長、ドギーはデカレッド、ブルー、グリーン、ブレイクを小型シャトルにのせて漂流船へと向かわせたのだった。


 レッド達は小型シャトルで大気圏を突破すると、一気に漂流船へと近づいた。六つの塔のような構造物がそびえたつ大型の貨物船に向けて、何度も呼びかけてみるがやはり反応は返ってこなかった。シャトルを貨物船の後方へ近づけてドッキングベイを通り抜けると、体育館ほどの広さのあるシャトル格納庫に着陸させた。

 ハッチを開けて周囲をうかがいながら外に出る。特に目立った損傷はなく、不気味な静けさが漂っていた。

「やはり誰も乗っていないんじゃ」

 ブルーが首を振り周囲を見渡す。人の気配というものが全く感じられず、動くものといえば天井から垂れ下がった鎖が空調の風に揺られて動く程度であった。

「手分けして乗組員を探そう」

 ブルーは全員に指示を出し、デカレンジャーは貨物船の中へ散り散りになって走っていった。


 乗組員を探して船室を捜索していたデカグリーンは、最後の個室の扉をくぐった。

「ここもか。どこに行ったんだろう?」

 どの船室も争った形跡はなく、生活感のある、整えられた部屋ばかりであった。部屋の中央はベッドルームで、間仕切りの向こう側にウォークインクローゼットとバスルーム。どの船室も同じ間取りである。もともと乗組員はきれい好きだったのか、どこもかしこもしっかりとものが整頓され、乱れているものと言えばベッドのシーツが少し歪んでいるくらいだった。だがどこにも人の気配がない。まるで船の中から人がそのまま姿を消してしまったかのようで、グリーンは言い知れぬ不気味さに背筋が冷たくなった。

 突然カタン、と部屋の奥で何かが倒れる音がした。グリーンはすっとディーナックルを抜いてゆっくりと物音がした方向へと歩いていく。部屋の間仕切りをするりと抜けてナックルを突き出した瞬間、グリーンは顔面に紫色のガスを吹きかけられた。

「ぐあああああああ!?」

 グリーンは鼻やのどに激痛を覚え、両手で顔を塞いでよろめいた。グリーンの脇腹を何者かが蹴り飛ばし、ベッドルームに吹っ飛ばされる。

「イ、イーガロイド……?」

 歪む視界の向こうに、大きなスプレーを持って立つイーガロイドの姿が見えた。スプレーを構えてゆっくりと近寄り、イーガロイドはグリーンの顔めがけて再びスプレーを吹いた。

「うああああ!」

 グリーンは倒れ込み激しく咳き込んだ。喉の奥に物がつっかえたような息苦しさに喘ぎながらドアの方へ顔を向ける。

「バン……」

 ドアの前にデカレッドが立っていた。レッドは無言でグリーンの顔面を蹴り飛ばす。

「ぐはっ!」

 ベッドのふちに頭をぶつけたグリーンが頭を押さえて立ち上がると、その両脇にデカブルーとデカブレイクが立っていて、二人はさっと手を伸ばしグリーンの腕をからめとった。

「何をするんだ! イーガロイドが……」

 グリーンの目の前にいたはずのデカレッドがイーガロイドに変わっていて、グリーンが思わず言葉を飲む。首を振りもう一度正面を見据えると、イーガロイドがデカレッドに姿を変えていた。

「これは……?」

 レッドはディーマグナムを構えるとグリーンの胸に向かって引き金を引いた。フルオートで連射された光弾がグリーンの胸に炸裂して、

「ぐわあああああああああああ!」

 グリーンのスーツがパンパン音を立てて小爆発を繰り返す。

「うあああああああ!」

 ブルーとブレイクが手を放し、グリーンはその場にがっくりと膝をついた。息を荒くして胸を押さえながらゆっくりと顔を上げると、イーガロイドが一体、悠然と立っていたのである。

「ちっとも効きやしねぇ」

 イーガロイドはグリーンの首をがっちりつかむと、スプレーが切れるまでそれをグリーンに吹きかける。グリーンは激しく咳き込み叫び声をあげ、体を激しく揺さぶった。

「よく効く神経毒だっていうんでもらってきたが、幻覚については今一つだったな」

 毒……? グリーンはこれ以上吸い込むまいと息を止める。するとイーガロイドが股間を思いきり蹴り上げ、

「うぎいい!」

 痛みに喘ぎガスを思いきり吸い込んでしまう。喉の奥の焼け付く痛みと激しい吐き気に襲われ、グリーンは何度もむせ返る。イーガロイドは空になったスプレー缶を投げ捨てると、グリーンを船室の壁に向けて放り投げた。

「ぐはっ!」

 ディーロッドに手を伸ばし、よろよろと立ち上がるグリーン。イーガロイドはゆっくりとイーガソードを抜く。狭い部屋で激しいつばぜり合いが始まった。グリーンとイーガロイドはお互いの剣をはじきあいながら、部屋の中を駆け回るように戦いを繰り広げた。突き出されたイーガソードをかわすためにテーブルを蹴り飛ばし、ソードを弾き飛ばそうとするディーロッドをかわすために椅子を踏み台にして飛びのく。グリーンとイーガロイドは整頓された部屋をぐちゃぐちゃにかき回しながら激しく火花を散らしあった。だが、突然グリーンがバランスを崩してよろめく。

「そこだ!」

 イーガソードがグリーンの体を切り裂く。

「ぐああああああ!」

 スーツから火花を散らしてグリーンの体が宙を舞って、倒れた机の上にぶち当たる。

「あ、足が……」

 グリーンの足が小刻みに震え、立とうと力を入れてもうまく踏ん張りがきかない。突き出されるイーガソードを転がってよけるとイーガソードをディーロッドで受け止める。イーガロイドが足を振り上げ、再びグリーンのまたぐらを蹴り上げた。

「ぐひいっ!」

 グリーンがディーロッドを取り落とし、両手で股間を抑えてその場にうずくまる。その背中をイーガロイドがめちゃくちゃに斬りつけた。

「ぐあ! ぐああ! うあああああ!」

 突き出したままの尻にかかと落としを食らわせて、尻を思いきり踏みにじる。イーガロイドはディーロッドをグリーンから取り上げ、わき腹を蹴り飛ばした。

「がはっ!」

 イーガロイドは毒が効いて思うように身動きができないグリーンの右足にイーガソードを突き立てる。

「ぐわあああああああああああああああああああ!」

 グリーンのスーツが大爆発を起こし、二人の間に煙がもうもうと立ち込めた。やがて煙が晴れると、その中でグリーンは足に突き刺されたイーガソードを引き抜こうともがいていた。スーツも足も完全に貫通しきって床に突き刺さったイーガソード。傷口からじわじわとあふれる血がグリーンのグローブを赤く染める。

「毒の効き目はどうだ?」

 その声に顔を上げると、目の前にイーガマグナムが突き付けられていたのである。銃声が響きグリーンのマスクから火花が舞い散る。

「ぐがっ!」

 グリーンのマスクにひびが入り、銃弾が命中した個所から煙が立ち上っている。イーガロイドはグリーンの首をつかみ、そこから電流を流し込んだ。

「ぐぅわあああああああああああああああ!」

 バリバリと音を立てて、高圧電流がデカスーツの表面に流れ、捕まれている首や胸、腹が爆発する。大きな爆発と小さな爆発が織り交ざって、グリーンの姿が煙の中に消える。

「うわああああああああああああああ!」

 緑色に光沢を放っていたスーツは表面が膨れ上がり所々が溶け始め、内部回路が顔を出す。グリーンのスーツの至る所が解けて破壊され始めていた。

 たっぷりと電流を流し終えたイーガロイドが手を放すと、グリーンの首筋の白いスーツにくっきりと、イーガロイドの手形が残っていた。露出した内部回路がショートして小爆発を繰り返し、倒れ込んだグリーンはヒクヒクと痙攣している。

「あっ…ぐあっあっ……」

 イーガロイドはグリーンの足に突き刺していた剣を引き抜くと、静かにグリーンの胸に足を置く。そして力いっぱいそのあばらを踏みつけた。

「うがああああああああああ!」

 スーツが爆発して火花を散らし、ミシミシと骨が軋む。

「うわあああああああ!」

 ボキリ、ゴキリと音を立て、グリーンのあばらが踏み潰され、

「ぐがっ! がはっ! ぐわああああ……!」

 グリーンが悲鳴を上げた。マスクの隙間から血が一筋伝い落ちていく。イーガロイドは足を振りあげグリーンの胸を思いきり踏みつけた。

「ぐはあっ! …あっ……うあぁぁ……」

 グリーンは頭をのけ反らせ喘ぎ、がくりと頭を垂れた。イーガロイドが足を退けるとグリーンの胸が小さく上下に動いている。

「……よし」

 気絶したグリーンの胸からSPDバッヂをはぎ取ると、それが目的だったかのようにイーガロイドは部屋を出ていった。

 デカグリーンはぐちゃぐちゃに乱れた船室の中で静かに横たわったままSPDバッヂを奪われ敗北してしまったのだった。


 船内を一通り見て回ったところで、デカブルーはシャトル格納庫へと戻ってきた。相変わらず視界に入るのは空調に揺さぶられる鎖だけで、人のいた痕跡が感じられない。

 格納庫の隅にある集積場から銃口がちらりと覗き、こちらに背を向けているブルーに照準をつける。銃声が響き、

「ぐああああ!?」

 ブルーはその場に倒れ込んだ。背中に食らった一撃でスーツが破壊されて、内部回路がむき出しになっている。だが、弾はその回路で止まっていた。

「ちくしょう、せっかく殺せると思ったんだがなぁ」

「ぐ…、誰だ!?」

「おいおい、もう忘れちまったのかい? この顔を」

 コンテナの隅から姿を現したその顔には、左半分が焼けただれた異星人の顔だった。

「…ファイゲ、か?」

 ブルーの目の前に姿を見せた男、ファイゲは口の端を釣り上げてにやりと笑った。過去に事件で追っていた犯人で、ファイゲの息子だったザオバをブルーはデリートしていたのである。

「貴様、この船の乗組員をどうした!?」

「殺しちゃいないぜ。ただ地球のそばを通るってんで乗せてもらったのよ。乗組員を途中で放り出してな」

「なんだと!?」

 ファイゲが銃を構えるしぐさを見せ、ブルーは慌てて物陰に身を潜めた。ディーロッドとナックルを組み合わせてディースナイパーを組み上げると、すぐさまファイゲに向かって引き金を引いた。ファイゲは光弾をひらりとジャンプしてかわしコンテナの陰に身を隠すと、遮蔽物越しに撃ち合いが始まった。格納庫の中一杯に銃声が響き渡り、銃弾が飛び交う。ブルーは姿勢を低くして遮蔽物の間を行き来しながら狙い撃つポイントを定め、ファイゲは突き崩されたコンテナを盾に寝そべって、素早く引き金を引き続けた。ブルーの放つ光弾はいともたやすくコンテナをかんっ通するが、ファイゲを仕留める事はかなわない。ファイゲの鉛弾はブルーが隠れる遮蔽物を簡単に突き破っては壁に当たりあちこちに跳弾する。

 一進一退を繰り返す戦闘を動かしたのはファイゲだった。ファイゲの銃弾が遮蔽物を貫通してディースナイパーに命中したのである。バンと爆発してブルーはディースナイパーを取り落とした。ロッドとナックルの結合部が見事に壊れて使い物にならなくなってしまったのである。

「ぐ……!」

 爆発のせいでブルーの両腕は感覚を失っていた。完全に痺れてしまってディーロッドをつかんでもその感覚がわからないのである。だがそんな贅沢を言っていられる状況ではない。ブルーは一か八かで遮蔽物から飛び出し、コンテナに向かって飛びかかった。だがそこにファイゲの姿はない。

「…なに!?」

 焦って振り返るとファイゲが狙撃銃を構えて狙いを定めていた。引き金が立て続けに引かれて大口径の弾丸が数発、ブルーに命中したのである。

「ぐわああああああああああああ!」

 ブルーのスーツが大爆発を起こす。その煙の中でブルーはぐったりと地面に倒れ込んでいった。

「ぐあ…、あ、あっぁ……」

 ファイゲの銃弾は正確に、ブルーの両腕と両足に命中していた。ブルーの両腕と両方の太ももには大きな破壊痕ができて、焼けただれた内部回路が煙を噴き上げていた。ブルーが痛みに悶えて転げ回っているところへファイゲが悠然と歩み寄り、ブルーの腕を踏みつけてディーロッドを奪い取った。そしてディーロッドでデカブルーの喉を突いたのである。

「ごはっ!」

 直後ロッドから電流が流れ、

「ぐああああああああああああああああ!」

 ブルーが体を激しく揺さぶりながら絶叫する。ディーロッドでファイゲは何度もブルーの喉を突いた。

「ごあっ! ぐはっ! ぐはあっ!」

 ファイゲはブルーに馬乗りになると、ロッドを横向きにしてブルーの首に押し当て、喉を押し潰しにかかった。

「ぐがっ…はっ、がはっ……!」

「苦しいか? 息子の苦しみと比べたらまだまだ足りないぐらいだぞ?」

「う…あ…」

 さらに力を込めてロッドを押し当てる。スーツに浮かび上がるブルーの喉仏がつばを飲み込み上下する。苦しそうに頭を左右に揺らす様子を見て、ファイゲはさらに力を込めた。ブルーの声が徐々に力を失っていく。そして体が痙攣を始めたところで、ファイゲはロッドを首から離した。

「がはっ! げほっ!」

 大きく息を吸い込んでむせ返るブルーの喉に再びロッドを突き立てる。

「ごえっ!」

 ブルーは両手で喉を押さえて激しく咳き込んだ。ファイゲはロッドをズボンに引っ掛け、ブルーの首をつかんで宙づりに持ち上げた。

「があっ……!」

 そして狙撃銃をブルーの腹にぴたりと押し当て引き金を絞る。

「ぐはあああっ!」

 ブルーは腹から火花を噴き衝撃で吹っ飛んだ。格納庫の床をゴロゴロ転がって壁に背中をぶち当てたブルーは、左手で腹を押さえた。その指の隙間から抉れたスーツの内部回路が火を噴いていた。痛みに呻くブルーの元へ歩み寄ったファイゲはまた首をつかんで持ち上げると、銃口を胸に突き付け引き金を引く。

「ぐがあああ!」

 さっきと同じように火花を噴きながら吹っ飛ばされるブルー。床にどさりと崩れ落ちたブルーはピクリとも動かない。ブルーの胸の中心が抉れて内部回路が火花を噴いていた。

「寝てんじゃねぇ!」

 ファイゲがブルーの胸を狙撃銃の柄で殴りつける。

「がはっ! ぐあああ……」

 意識を取り戻したブルーが胸を押さえてもんどりうつ。ズボンに引っ掛けたロッドを手に持ち、それをブルーの股間に振り下ろした。

「うっがあ!」

 股間を押さえて転げまわるブルー。ファイゲはロッドの爪を開き差叉に変え、ブルーの胴体を挟み込んで電撃を浴びせた。

「ぐぅあああああ! うがああああああああああ!」

 そのままブルーの体を挟み込み電流を浴びせながら、デカレンジャーが乗ってきたシャトルに向かって投げつけた。シャトルの外壁をへこませるほどの衝撃でぶつかったブルーは床に落ちて激痛に体をくねらせた。悶え苦しむブルーのベルトのバックルを開けてディーワッパーを奪い取ったファイゲは、ブルーをうつ伏せにして後ろ手に拘束する。足を撃たれて満足に動けないブルーをシャトルの壁にもたれさせると狙撃銃で狙いを定めた。

 一発目が放たれた。腹に命中して火花が飛び散り、

「ぐわああああああ!」

 ブルーが体を反らせて叫ぶ。続けて二発目が発射されると、それはブルーの胸に命中した。

「ぐがあああああ!」

 三発目、四発目と続けざまに放たれた弾丸は、正確にブルーの腹に命中する。

「うあああああああ! ぐわああああああ!」

 五発目はブルーの眉間に命中した。マスク全体にびっしりとひびが走り、

「ぐはっ!」

 ブルーの意識が飛びかける。

「こいつでラストだ」

 弾倉に残った最後の一発は、ブルーの股間に命中したのである。

「うっぎいぃぃいい! ぐああああああああ!」

 ブルーは頭から地面に倒れ伏した。ごろりと横に倒れて銃弾で破壊されたスーツをファイゲに向かって晒している。弾が命中した個所は穴が開いたように抉れて内部回路が弾丸をかろうじて受け止めている。マスクは今にも割れそうで、胸や腹、股間にいたるまで破壊痕が痛々しく煙を噴き上げていた。

 ファイゲはディーロッドの差叉でブルーの首をがっちりとらえると、高圧の電流を流し込んだ。

「ぐがあああああああ! ぐあああ! ああああああああああ!」

 ブルーの体が電撃を受けて跳ねまわり、焼け付く痛みに声を張り上げる。破壊されたスーツの内部回路が体に触れて、その電流はブルーの体を駆け巡った。しばらく絶叫を続けていたブルーだったがやがて、

「がっ、ああぁ…、ぐはっ、あっ、うあっああぁ……」

 苦しみの声も小さくなってきた。

「あっ…、あっあっうああっあっ……」

 がくりと頭が横に垂れ、ブルーは気を失ってしまった。ファイゲはふんと鼻で笑うとディーロッドを投げ捨て胸に輝くSPDバッヂを奪い取るとポケットに収めた。

「命だけは助けてやろう。こいつを墓前に据えてそれでチャラにしてやる」

 ファイゲは気絶したブルーのマスクにつばを吐きかけると、シャトル格納庫を出ていったのだった。


 乗組員を探して第一貨物室へやってきたデカブレイクは、コンテナをあさりながら無線機で仲間に呼びかけている植物型アリエナイザーを見つけて物陰に身を潜めた。ブレイクはすぐに、

「先輩」

 と小声でレッドに無線を送る。だが、無機質なノイズが流れるばかりで一向に繋がらなかった。アリエナイザーは背中から触手を数本伸ばしてほかのコンテナを触手を使って開けていく。触手の先端が蛇の口のように開いてコンテナのフックを外し蓋を開けて中に収められている銀色の袋を外に放り出していた。

 先輩達と連絡が……。自分でやるしかないか。ブレイクは物陰から飛び出し、

「動くな!」

 と叫んだ。アリエナイザーの動きがぴたりと止まり、コンテナをあさっていた触手がブレイクの方を向く。

「宇宙警察か」

「そこで何をしている!」

「食料を探していたんだよ」

 アリエナイザーはくるりと振り返ってブレイクをじっと見つめた。そして高らかに笑うと、

「今俺の顔をデータベースと照合しようとしたんだろう? お前らが通信に使う周波数は妨害済みだよ」

「なに!?」

 たしかに照合しようとしても回線自体が繋がらなかったブレイクは、ブレスロットルのレバーを立てて戦闘態勢をとる。

「こりゃ旨そうな刑事さんだな」

「黙れ! 必殺拳、ソニックハンマー!」

 ブレイクはアリエナイザーに飛びかかった。アリエナイザーは触手を鞭のようにしならせ、ブレイクの脇腹を殴りつける。

「ぐあ!」

 床にたたき落とされたブレイクに触手をふるう。ブレイクは転がってよけると、

「電撃拳、エレクトロフィスト!」

 左手を床に押し当て、電撃が床を伝いアリエナイザーに向かっていく。だが、アリエナイザーは触手を天井の梁に絡めてジャンプしてよけると、再び触手を突き出してブレイクを殴った。

「ぐはっ!」

「照合できないようだから名乗っておくよ。僕はティルプス。傭兵団の一員だ」

「傭兵……?」

「船には他にも仲間がいる。君の仲間達も今頃は戦ってるんじゃないかな?」

「目的はなんだ!?」

「それはリーダーに聞いてもらわないとね。聞けるなら、だけど」

 アリエナイザー、ティルプスは触手を猛烈な勢いで伸ばしブレイクの両腕をからめとった。

「うわ、くそ!」

 さらに別の触手がブレイクの足に絡みつき、触手が口を開けて大量の液体をブーツに吹きかけた。その液体は空気に触れ、石のように固まってしまい、ブレイクは足の自由を奪われてしまったのである。

「そんな……!」

「それじゃ、刑事さんには僕の餌になってもらおうかな」

 触手がするりとブレイクの首に巻きつき、触手の腹についた吸盤が首筋に吸い付きぐっと絞めあげる。

「があっ……!」

 腕と首に巻きついた触手が青白く光り、ブレイクの体からエネルギーを吸い取り始めた。

「ああっ! うあああっ!」

「おおこいつは……。随分とため込んでるじゃないか」

「ぐああああ!」

 エネルギーを吸い取られながら、ブレイクは触手をほどこうと暴れまわる。だが、ティルプスの触手の力に負けて抵抗を抑え込まれてしまい、反撃すらままならなかった。その間にもどんどんエネルギーを吸い取られ、ブレイクが消耗していく。

「ここまで詳細にデータまでとれるとは思わなかったよ」

「な…に……!?」

 ティルプスはソニックハンマーの構えを見せ、

「ま、まさか……!?」

 ブレイクの腹に拳を叩き込んだ。

「ごはああっ!」

 ブレイクの腹にティルプスの拳がめり込み、大量の火花が煙と共に飛び散った。腹から煙が立ち上り、ブレイクが苦しそうに首を振って悶える。ティルプスの左腕にブレスロットルそっくりのこぶが浮かび上がっていた。

「気づいたかい? 僕はコピーが得意なんだ。君のエネルギーを根こそぎ奪い取ったら、君の技で倒してあげるよ」

「ぐああああああああああ!」

 首を絞めあげる触手がさらに輝きを増して、ブレイクのエネルギーを猛烈な勢いで吸い上げていく。ブレイクの膝ががくがくと震えだし、腕をからめとっている触手に吊り下がるような格好でがっくりと力が抜けてしまった。ティルプスは天井の梁めがけて触手から液体を飛ばし、ブレイクの腕と梁を繋げて固め大の字に拘束すると満足そうに微笑んで、

「たしか、こうだったかな?」

 エレクトロフィストの構えを見せて拳を地面に突き立てた。ティルプスの腕から電撃が走り、ブレイクの股下から脳天へ一気に電撃が駆け抜ける。

「ぐわあああああああああああああああ!」

 ブレイクのスーツが絶叫と共にズバババッと音を立て体の至る所から火花が噴きあがった。

「うあああああああああああああ!」

 電撃がやむと、ブレイクの全身を包むように煙が立ち上り、ブレイクが力なく頭を垂れる。

「ぐあ…、あ……」

「色々な技があるんだね。これで一体何人を倒してきたのかな?」

 ティルプスは次に、ライトニングフィストの構えを見せると、光の速さで繰り出される拳が何度もブレイクの腹を襲う。

「ぐはっ! ぐあああっ! うっごはっ! がはあっ! ぐはあああっ!」

 ティルプスはブレイクのスーツにうっすらと浮かぶ腹筋を一つずつ潰していくかのように、何度も連撃を繰り返す。

「がはっ! ぐほぉっ! ぐっがっああっ! ぐあああああ!」

「一度言ってみたかったんだよね。ソニックハンマー!」

 ティルプスの拳がブレイクの鳩尾にめり込んだ。

「ごぼおぉっ!」

 ブレイクの体がくの字に折れ、プルプルと体を震わせる。

「がはあっ!」

 がっくりと頭を垂れるブレイク。マスクの隙間から血が一筋滴りだした。マスクの中に吐血してしまったのである。

「がはっ……! …ぐああ……」

「あれ、まだ生きてるんだ。じゃあ……」

 ティルプスは壁際の消火用具が格納されているケースをたたき割り、斧を手に戻ってきた。

「たっぷりエネルギーを頂きたいところだけど、スーツに邪魔されててね。こいつは破壊してからのがいいかもしれないね」

 ティルプスはそういって、斧を振りかざしブレイクの右肩に振り下ろした。

「ぐあああああああああああああああ!」

 斧の刃がスーツを断ち切り火花が舞う。刃が食い込んだ先からシューシューと煙がのぼり、バチバチと火花を散らしていた。

「もういっちょ!」

「ぐわああああああああああああああ!」

 ティルプスが今度は斧で左肩を狙う。

「うあああああああああああああああ!」

 もう一撃を食らわせて、ティルプスはため息をつく。二度も振り下ろせばスーツを引き裂けると思っていたのだが、たしかに表面は裂けたものの効率よく吸収できそうなほど破壊するには至らなかった。舌打ちをしてティルプスは乱暴に斧を振るい出した。

「この」

「うがああああああああ!」

「クソ忌々しい」

「ぐがああああああああああああ!」

「デカ」

「うっがあああああああああああ!」

「スーツめ!」

「ぐわああああああああああああああ!」

 斧を振るいながらティルプスはぶつぶつ文句を垂れる。斧が振り下ろされるたびにブレイクは絶叫し、スーツは爆発し、真っ白い光沢を放つスーツは所々が焦げ始め引き裂かれていく。最後の一振りがブレイクの脳天に落ちる。

「ぐひいいい! うがあああ!」

 マスクにひびが走り、ブレイクのデカスーツが至る所で爆発を起こし始めた。とどめの一撃でとうとう破壊されてしまったのである。ティルプスは斧を投げ捨てて大きく息を吐いた。

「やっとか。中々しぶといね」

「ぐあ…うあぁ……」

「じゃあ、残りのエネルギーを頂くとしますか」

 ティルプスは触手を伸ばして胸や肩の破壊痕に食らいつき、ブレイクの首を触手で絞めあげる。

「とどめだ!」

「ぐわあああああああああああああああああ!」

 ブレイクの至る所に咬みつき、巻き付いた触手がビクビクと脈打って、ブレイクの全身からエネルギーを吸い上げる。ブレイクは苦しそうに頭をのけぞらせると、苦悶の声を漏らす。そこへ触手がさらにきつく巻き付き喉を押し潰す。

「がひゅっ、ぐああ…あ、がっ……」

 力が…抜ける……! ブレイクのスーツは至る所から火花を噴き、全身を青白い電光が走って触手へと吸収されていった。

「うああああああああああああ!」

 ブレイクの体が激しく痙攣をはじめ、手足から力が抜けていった。

「あ、あがっ…がっぐあああ……」

「そろそろ仕上げだ!」

 首に巻きついた触手がさらにブレイクの首をきつく絞めあげた。

「ぐああああ!」

 ブレイクの胸に激痛が走り、がっくりと頭を垂れる。そしてブレイクはそのまま動かなくなってしまった。エネルギーを吸収し終えたティルプスが触手をほどくと、手足を拘束していた塊が液体に戻り、ブレイクの体がゆっくりとその場に崩れ落ちていく。埃を巻き上げて倒れたブレイクを仰向けにすると、ティルプスはブレイクの胸に輝くバッヂをむしりとった。

 一転して静寂に包まれた倉庫の中で、ティルプスと気を失ってしまったブレイクの呼吸音が静かに響く。ティルプスは、

「ごちそうさま」

 と言ってブレイクの頭を軽く蹴飛ばし、倉庫を出ていったのだった。


 貨物船の操舵室へやってきたデカレッドは、乱雑に置かれたマニュアルや飲みかけのコーヒーカップに目をやり、乗組員が姿を消した理由を探っていた。操縦席や航法用のコンソールが所狭しと並ぶ狭い操舵室の中を歩き回り、コンピューターで航海日誌を呼び出しても特に不審な点は見つからず、皆目見当もつかなかった。そこへドアが開きデカレッドは振り返った。

「だめだ、手掛かりが……」

 てっきり仲間だと思っていたが、目の前に現れたのはヒューマノイド型の異星人だった。異星人は素早く銃を抜き、レッドめがけて発砲したのである。

「うわ!?」

 レッドはコンソールの裏に隠れてディーマグナムを抜きコンソールから身を乗り出す。だがすぐに銃弾が飛んできてレッドは頭を引っ込めた。

「くそ、何をするんだ!」

「なんで宇宙警察が乗り込んでるんだ!?」

 異星人、メトスはコンソールを盾にしながらレッドが隠れているところへ向かってめちゃくちゃに銃を撃つ。

「SOSを受信したんだよ!」

 レッドも負けじと撃ち返した。互いの頭上を光弾が飛び交い、外れた弾が操縦席やコンソールを爆発させる。レッドはコンソールから飛び出してメトスに向かって突撃を仕掛けた。

「ちくしょう!」

 レッドが振り下ろした拳を受け止め、メトスはレッドの腹を蹴り上げる。

「ぐふっ!」

 腹を押さえて後ずさったレッドは、得意のジュウクンドーで倒そうと再び突撃を仕掛けた。だがメトスにことごとく攻撃を受け流され、逆に重いパンチを腹や顔面に食らって吹っ飛ばされてしまった。

「くそ、なんだこいつ……!」

「食らえ!」

 怯んだところへメトスが光弾の嵐をレッドに叩き込んだ。

「ぐあああああああああああ!」

 レッドのスーツが大爆発を起こして、レッドは操縦席にたたきつけられた。その衝撃でディーマグナムを手から離してしまい、慌ててそれを取ろうとすると、光弾がディーマグナムを弾き飛ばしてしまった。

 レッドとメトスはそのまま格闘戦になだれ込み、お互いに殴り合い、蹴りを放ち合う。だが銃を持っている分メトスの方が戦いを有利に運んでいた。メトスはレッドの蹴りを受け流してレッドの胸に光弾を放った。

「ぐはああっ!」

 レッドの体が吹っ飛ばされて壁にたたきつけられる。メトスは壁に寄りかかって倒れ込んでいるレッドの股間めがけて飛び蹴りを食らわせた。

「うぎいいいい!」

 メトスのかかとがレッドの股間にめり込み、レッドは苦悶の叫び声をあげて両手で股間を押さえてうずくまった。痛がるレッドの襟首をつかんで何度もコンソールにたたきつけ、仰向けにして胸倉をつかむと銃口を腹にぴたりと押し当て引き金を引く。

「ぐわあああああああああああああああ!」

 レッドの腹部が大爆発して、衝撃でレッドが操舵室の隅へと吹っ飛ばされた。

「うあ…、ああぁ……」

 レッドは震える手で腹を押さえる。撃たれたところが抉れて、スーツに穴が開いていた。内部回路やちぎれたコードが露出して、小さく火花を散らしている。レッドの額に銃口が突き付けられた。

「立て」

 レッドは両手を上げてゆっくりと立ち上がった。そして隙を見てメトスの腹を殴りつけ、操舵室を飛び出した。

 激しいダメージを受けたレッドはよろよろと頼りない足取りで壁に手を突きながら廊下を進む。角を曲がったところで突然剣を振りかざされ、レッドはよける間もなく斬られてしまった。

「ぐあああああ!」

 イーガロイドがイーガソードを振り回しながらレッドに襲い掛かる。

「イーガロイドまでいるのかよ! うわっ!」

 レッドはイーガロイドのソードをよけるのが精いっぱいで、背後に近づくメトスに気付いていなかった。

「こっちだぜ」

「なに!?」

 振り返ったレッドに向けてメトスが光弾を放ち、イーガロイドはその背中に向けてイーガマグナムを放つ。前後から挟まれておびただしい数の光弾を浴びせかけられたレッドのスーツは、その姿が見えなくなるほどの大爆発を起こした。

「うわああああああああああああああああああああああ!」

 銃撃がやむと、レッドは体に煙をまといその場にドサリと崩れ落ちる。レッドのデカスーツは前も後ろもめちゃくちゃに破壊され、赤い光沢を放っていたスーツは所々黒く焼け焦げていた。

「ぐあ…、あがっ……、がはっ……」

 痛みに打ち震えるレッドをイーガロイドが羽交い絞めにする。抵抗できないようにがっちりと関節を固めたイーガロイドはメトスに目配せした。メトスが拳を固めてレッドの腹を殴りつけた。

「ぐぶぅっ!」

 顔面にパンチを食らわせ、

「がはあっ!」

 股間を蹴り上げる。

「ぐぎいぃぃっ!」

 痛みにもだえながらもレッドはイーガロイドを振りほどこうと激しく暴れる。そこへもう一撃股間を蹴り上げられ、

「うがあああっ!」

 レッドはぐったりとしてイーガロイドに体を預けた。メトスは拳を開いて鋭い爪を伸ばすと、レッドの体を引き裂いた。

「ぐわあああああああ!」

 レッドのデカスーツが引き裂かれて内部回路やコードが露出する。レッドは羽交い絞めにされたまま、メトスの攻撃をただ受け続けるしかなかった。斬られるたびにレッドは、

「うああああ! ぐわあああ! ぐぁあああああ!」

 苦痛に体をよじらせて叫ぶ。上半身をズタズタに切り刻まれ、レッドのスーツは限界を知らせるかのように何度も爆発を繰り返す。イーガロイドがメトスに向けてレッドを突き飛ばすと、今度はメトスがレッドを羽交い絞めにして、イーガロイドがソードでレッドをX字に切り裂いた。

「ぐああああああ!」

 デカスーツの上半身は無残にも切り裂かれ、X字の破壊痕が痛ましいほどくっきりと刻まれていた。内部回路も寸断されてその隙間から覗く地肌には、幾重にも赤い筋が走り血が滲んでいる。

「あがっ…、ぐあああ……」

 イーガロイドはイーガマグナムを手にレッドに歩み寄り、ぐったりとしているレッドの顔面を殴りつけた。

「ぐはっ!」

 何度も何度も、イーガロイドは無言でレッドの顔面を殴り続ける。

「ぐぶっ! ぐあっ! がはっ!」

「苦しいか?」

「うぐっ…、くそぉ……」

 イーガロイドは鼻で笑い、イーガマグナムをレッドの鳩尾に押し当てて引き金を引く。ゼロ距離で放たれた光弾が急所を直撃し、

「ぐぶはぁっ!」

 スーツが派手に火花を散らし、首元を覆う白いスーツに血が滲む。

「血を吐いたか。だがこれよりもっときついのを食らわしてやるぞ」

 イーガマグナムが腹から下へくだり、バックルを通り越してペニスをなぞる。そして睾丸の上でぴたりと止まると、レッドはプルプルと首を振った。

「ここは嫌か?」

 知ったことかとイーガロイドが引き金を引く。

「うぎゃああああ! ぐああああああああああああああ!」

 レッドが体を激しく揺さぶって叫ぶ。メトスが手を放すとレッドはその場に崩れ落ち、ゴロゴロ転げまわった。

「うがああああ! うあああああああ!」

 メトスはレッドの胸を踏みつけ銃を抜くと、イーガロイドと同じように股間を狙う。バンバンバン! と廊下に銃声が響き渡り、レッドの股間が大爆発を起こした。

「ぐがああああああああああああああ!」

 レッドが腰を突きあげて叫ぶ。イーガロイドもイーガマグナムで再び股間を狙い引き金を引いた。

「うぎゅうああああ! ぐわああああああああ!」

 銃声とレッドの叫び声が廊下に響き渡る。

 メトス達が銃撃をやめると、レッドは体をエビのように反らせてもがいていた。

「ぐっ…ぎゃ、あっ……」

 見ればレッドの股間に染みが広がっていく。

「おい、こいつ漏らしたぞ」

「そりゃ当然だろうよ。こんだけ撃たれりゃ俺だって漏らすさ。ロボットのお前にはわからんだろうがな」

 メトスはレッドの胸を踏みつけていた足をどかし、漏れて濡れているレッドの股間にかかと落としを食らわせた。

「うぎいいいいぃいぃ! ぐああああ……」

 股間を押さえて身悶えるレッドは、股間の染みを床にまで広げながら徐々に声のはりを失ってやがて、

「ぐあ…、あっがっあ……」

 体を痙攣させたかと思えば気を失ってしまったのだった。

「契約完了、と……」

 メトスはレッドの胸のバッヂを奪い取ると気絶しているレッドをその場に残し、いずこかへと去っていったのだった。


 連絡が途絶えたことに不安を覚えたドギーは、デカマスターに変身して単身シャトルで貨物船へ向かっていた。ドッキングベイへ近づくと、イーガロイドの姿が見え、マスターはシャトルのスロットルを最大にあげて突っ込ませた。けたたましい音を立ててシャトルがイーガロイドを押し潰しシャトル格納庫に激突する。マスターはシャトルを降りて周囲を見回した。倒れているブルーを見つけたマスターは駆け寄って抱き起し、

「ホージー、起きろ! 何があった!?」

 と呼びかける。だがブルーは返事を返さなかった。マスターはブルーを彼らが乗ってきたシャトルに乗せると、船内を歩き回り始めた。

 船室でグリーンを、倉庫でブレイクを。そして操舵室へつながる廊下でレッドをそれぞれ発見したマスターは、怒りに震えながら三人をシャトルにのせる。

「おやおや、予定外のお客さんだな」

 格納庫二階の手すりにもたれかかったファイゲが笑い、ティルプス、メトスともう一体のイーガロイドが一階へと飛び降りる。

「お前達がみんなを……。許さんぞ!」

 マスターはディーソードベガを抜き飛びかかった。ティルプスの触手を断ち切り、メトスとファイゲの銃弾を叩き落とす。

 背後から斬りかかろうとしたイーガロイドを真っ二つに切り裂いた。

「な、なんだこいつ!?」

「強いぞ!?」

 マスターは一気にデリートしようと必殺技を放った。ファイゲが狙撃銃を構えて発砲するが、その弾が切り裂かれファイゲが絶命の叫びをあげて爆発する。

 触手を切り落とされ戦う能力を失ってしまったティルプスもディーソードベガが一閃して両断されてしまった。残ったメトスはコンテナを蹴り飛ばして必死に銃を撃つ。マスターはそれを薙ぎ払い、

「ベガスラッシュ!」

 と必殺攻撃を繰り出した。メトスは全身から火花をまき散らして大爆発を起こし、粉々にされてしまったのだった。


 変身を解いたドギーは操舵室に向かい、操縦席に座ると貨物船を地球の周回軌道に乗せる。苦虫を噛み潰したような顔で荒く息を吐きながらシャトル格納庫へ戻ると、いまだ気を失っている四人を乗せたシャトルを発進させた。時折後ろを振り返っては、凄まじい姿で気絶している四人を見て唸る。

 大気圏を抜けてシャトルは地球署へたどり着いた。署員が担架でレッド達を運んでいく。それを見てドギーは少し安心はしたものの、怒りは収まらなかった。自分も最初からついていれば。後悔ばかりがドギーの頭の中を駆け巡る。時間が戻せるものなら戻して、一緒に戦ってやりたかった。そんな思いが津波のようにドギーの心に押し寄せては引いていく。

 倒された四人が活動を再開できるようになるまで、かなりの月日を要したのだった。


(了)

EpisodeXX デンジャラス・シップ

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