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ぼくらの秘密基地
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【SS】ブルーマスクが負けた日

 街を夕暮れが包み込み、高層ビル群が地面に長い長い影を落とす。人々はアングラー兵から逃げ惑い、ある者は殴られて倒れ伏し、またある者は武器で撃たれ、平和な街は一変して地獄絵図と化していた。  マスクマンのレッド、ブラック、イエロー、ピンクは颯爽と現場に駆け付けたが、ピエロの姿をした怪人、グラシオソによって風船に姿を変えられてしまったのだった。少し遅れてやってきたアキラに向かって、グラシオソはにやりと笑うと、アキラを風船に変えてしまおうと怪光線を放った。 「うわっ!」  寸前でよけたアキラは地面を転がり体勢を立て直すと、 「オーラマスク!」  と叫び、ブルーマスクに変身した。 「お前を倒して、みんなを元に戻してやる! 食らえ、マスキートンファー!」  ブルーはトンファーを取り出すとグラシオソに向かって突撃を開始した。だが、グラシオソは不気味な笑い声をあげながらするりするりとブルーの攻撃をかわしていく。ブルーはその動きを読んで、次に敵が頭を振る方向へトンファーを振り上げた。  だが、グラシオソがレッドの風船を操って自分の盾にしたのである。 「なに!?」  ブルーは風船に当たる寸前でトンファーを止めた。すかさずグラシオソの蹴りが飛ぶ。 「ぐはっ!」  わき腹を蹴られて横に吹っ飛ぶ。地面を転がって再び立ち上がったブルーはトンファーを構え直して再び向かっていった。だが、風船を自分の周りに漂わせてにやつくグラシオソの前に、ブルーはどうすることもできなかった。  グラシオソは笑いながら、 「どうした、俺を倒すんじゃなかったのか? お前の大事な仲間ごと、俺を倒すがいいさ」  そう言って一層甲高い声で笑った。「この風船が割れればレッドが死ぬぞ」 「ちくしょう、どうしたらいいんだ……!」 「ブルーマスク、お前の相手は俺だけじゃないぞ!」  グラシオソは口を大きく開けると、水色の液体を吐き出した。ねばねばしたその液体は徐々にたくましい体を形成し、口が割れ、目が開き、低い唸り声をあげる。 「さぁ、俺の可愛いスライムよ。ブルーマスクを攻撃するのだ!」  スライムはブルーマスクに向かってゆっくりと歩き出した。 「レーザーマグナム!」  ブルーは腰のホルスターから武器を抜いて、立て続けに引き金を引いた。撃ち出されたレーザーはスライムに全て命中したのだが、スライムの体の中に吸収されてしまい、まったくダメージを与えられなかった。そればかりかスライムの体がさらに筋骨隆々になっていく。ブルーはそれでもレーザーマグナムを撃ち込み続けた。 「馬鹿め! お前のレーザーのエネルギーを吸収すればするほど、こいつはパワーアップしていくのだ!」 「なに!?」  それを聞いたブルーマスクは撃つのをやめて、再びトンファーを構えると接近戦に流れ込む。少年剣士として鍛えた体のしなやかさを活かしてトンファーでスライムの攻撃を受け流しながら、わき腹やあごに攻撃を当てていく。  だが、どれだけ打撃を与えても怯みもしないスライムは、徐々にブルーの攻撃をかわし始め、最後にはトンファーがかすりもしなくなっていく。  スライムはブルーのトンファーを握る両腕を掴み、わき腹に蹴りを何発も食らわせた。 「ぐあっ! がはっ!」  ドス、ドスと肉を打つ音と共にブルーのスーツから火花が散る。何度もわき腹を蹴り上げたスライムは、ブルーのトンファーを奪い取ると、それで殴り返し始めた。顔面を何度も殴りつけ、トンファーを鳩尾に叩き込む。 「うああっ! ぐあっ、ぐわああっ!」  スライムの攻撃は素早さを増して、ブルーを痛めつけながら建物の壁際へと追い込んでいった。  ブルーの背中が壁際につくと、スライムは思い切り腕を振って、右手に握るトンファーをブルーの腹に突き刺した。 「ぐぶああぁっ!」  ブルーの体がくの字に折れてコンクリートの壁にひびが入る。 「がっ…、はっ……!」  ブルーの背中が半ば壁にめり込んだ状態で足が宙に浮いてしまっている。 「くそ……!」  ブルーはスライムにパンチを食らわせてよろけさせると、地面にがっくりと膝をついた。再び立ち上がり、拳を固める。ブルーに突進してくるスライムのトンファーをよけて、腹に何発もパンチを打ち込んだ。だが、ブルーの拳はスライムの体にめり込むばかりでちっともダメージを与えられずにいた。  何十発とパンチを打ち込んだ時、異変が起きた。右腕がめり込んだまま抜けなくなってしまったのである。 「う、腕が……!?」  焦って引き抜こうとするブルーの頭をスライムは両手でがっちりとつかむと、足を振り上げて何度もわき腹を蹴り上げる。 「ぐがっ! ぐああっ!」  そして、スライムの膝がブルーの股間に打ち付けられた。 「あぐうぅっ!?」  金的を食らったブルーがバランスを崩すと、スライムは体重をかけてブルーを地面に押し倒した。そして顔をゆっくりと近づける。  スライムの体が瞬時に液状になってブルーマスクを包み込んだ。スライムの体の中に大きな気泡が浮かび始めると、 「いいぞいいぞ、そのまま空気を抜いてしまえ!」  グラシオソが言う。「そのまま窒息するがいい!」 「なっ……、く、くそぉっ……」  ブルーがもがけばもがくほど、ぶくぶくと気泡が泡立って、まるで水の中で溺れているようでもある。だんだんと空気がスライムの体を通じて抜けていくと、暴れているブルーの動きが鈍りだす。 「ぐあっ、い、息が……!」  グラシオソが近寄り、ブルーの腹を踏みつけた。 「がはあっ!」  ブルーのマスクから大量の気泡が吐き出される。 「ぐがっ、あっ、がはっ! うぐうぅぅっ……!」  ブルーが首を掻きむしりながら地面を転げまわる。  グラシオソは空高くジャンプすると、仰向けに転がったブルーの鳩尾めがけてつま先を深く突き刺した。 「がはああぁっ! ぐはっ、うぐうぅぅぅっ!」  鳩尾への強烈な一撃は内臓を直接抉られるような激しい痛みだった。それに加え酸欠状態に追い込まれたブルーはビクビクと体を痙攣させてもがくばかりである。  スライムがぐにゃぐにゃと揺れてブルーを解放すると、ブルーは喉を押さえて激しく咳き込んだ。酸欠状態に追い込まれて立ち上がるのがやっとの状態である。スライムは奪ったトンファーを構えてブルーに攻撃を食らわせた。  いつも敵を叩き潰してきたトンファーが、今はブルーの腹筋を叩き潰していく。攻撃を食らうたびに、 「ぐはっ! うああっ! がふっ! がはぁっ!」  ブルーはうめき声をあげ、スライムのなすがままに殴られ続けていた。スライムのアッパーがブルーの鳩尾をえぐり、 「ぐはあぁっ!」  濁った声をあげて、つま先が宙に浮く。スライムの肘鉄がブルーの背中を捉えて、ブルーを地面に叩き落とした。 「ぐあぁ……!」  地面を転がって、震える手で腹を押さえるブルー。グラシオソはあまりの激痛に動くことすらできない彼に馬乗りになって、笑い声をあげながら両手をブルーの首に伸ばした。そして、 「がっ…!? ぐぁ……!」  力いっぱい首を絞めあげる。ブルーは苦しそうに頭を振り、震える両手でグラシオソの腕をつかみ、引きはがそうと力を込めた。ブルーが抗おうとすればするほどグラシオソは力を強め、太い指が首筋に食い込んでいく。 「あっ…がぁっ……! はっ……、うぅっ……」  グラシオソは掌の中で、空気を求めて動く喉仏や、生唾を飲み込む動きを確かめながら、時折力を緩めて息を吸わせてはまた絞める。それを何度も繰り返した。 「がはっ……、ぐえ……、あうぅ……!」  きつく絞めあげるとブルーは体を弓なりに仰け反らせ、ガタガタと震え出す。グラシオソの腕を掴んでいたブルーの両手が地面に落ちると、体を激しく揺さぶってアスファルトの地面をかきむしる。  グラシオソはニタニタと笑いながら深く息を吸い込む。すると体からバチバチと電気が走り、やがてそれは勢いを増しブルーめがけて流れ込んだ。 「ぐわあああああああああ!」  ブルーが叫び、スーツがあちこちで爆発を起こした。火花や白い噴煙をスーツからまき散らして、苦痛に叫ぶ。 「ぐぅわああああああああああああああ!」  ブルーの首筋から白煙が昇り、皮膚の焼ける臭いがグラシオソの鼻先をかすめると、電流を止める。そして手を離すとブルーの体が地面に落ちた。 「あがっ! がああっ!」  首筋を覆っていた白いスーツは、グラシオソの手の形に沿って焦げて、焼けた皮膚が露出している。文字通り焼ける痛みを味わったブルーはせき込み、首を押さえて転げまわる。その背後からグラシオソの手が伸びてブルーの後頭部を掴むと、顔面を激しく地面に叩きつけた。 「ぐはっ!」 「どうした? お前ひとりの力など所詮こんなものさ」 「ぐっ……!」 「そろそろとどめといくか」  グラシオソはブルーの顔面を何度も地面に叩きつける。 「がっ! ぐあっ! うあっ! ぐあああ!」  グラシオソがぐっと腕を引くと、渾身の力で地面に叩きつけた。 「ぐがあっ!」  バーンと激しい音を立ててマスクが爆発する。頭を持ち上げるとブルーのマスクが半分吹き飛び、アキラの顔が露わになる。こめかみのあたりや鼻から血を垂らし、苦しそうに顔を歪めていた。  グラシオソはブルーの尻の上にのっかり、太い腕を首に回すと一気にブルーを絞めあげた。 「ぐがあぁっ! あがっ、ぐっえっ! うああぁ……!」  気道を完全に塞がれて息ができない。口の端から涎を垂らし、見開いた目が徐々に上向きに反っていく。そして、 「がっ…、はぁっ……」  ブルーはついに意識を失った。がっくりと頭を垂れ、割れたマスクのふちから、垂らした涎が地面に糸を引いて落ちていく。半開きの目からは生気が消えて、時折体を震わせていた。  グラシオソが腕を離すと、ブルーの体が青い光に包まれて変身が解ける。気絶したアキラがその場にどさりと倒れ込んだ。  グラシオソはアキラの頭を踏みつけて指を鳴らした。するとあたりを漂っていたレッド達の風船が風に吹かれてグラシオソのそばへとやってくる。もう一度パチンと指を鳴らすと風船の糸がアキラの首にするすると巻きついて締め上げる。グラシオソが足をどかすと、風船の浮力でゆっくりとアキラの体が宙に浮かび上がった。  膝立ちの姿勢で宙づりになっているアキラに向かって、 「思い知ったか、ブルーマスク!」  とグラシオソは言った。「貴様の負けだ!」  四色の風船に吊るされたまま気を失っているアキラをグラシオソはじっと見つめると、彼をその場に放置してスライムとともに姿を消したのだった。 (了)

【SS】ブルーマスクが負けた日

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